空き家は放置しておくと、近隣住民にとっても、所有者にとっても様々な不利益を引き起こします。
空き家は空き家になったときから、放置せずにきちんと管理していくことが大切ですが、空き家が建物として利用できないほど老朽化してしまった場合には、解体するしかないかもしれません。
そうなってしまった場合、費用はできるだけ抑えたいものです。
そこで、今回の記事では、空き家を解体する際に使える補助金についてご紹介いたします。
空き家の解体に補助金は出る?空き家放置のリスクと法律を知っておこう
空き家を放置するリスク
まずは、空き家を放置しておくと、どのようなリスクがあるのかについて知っておきましょう。
建物は人が使わないと、急速に老朽化が進んでいくものです。
空き家となってしまった場合、適切に管理されていないと、問題となるのは老朽化による倒壊の危険性にとどまりません。
放置された空き家は、野生動物や害虫による衛生上の問題、不審者の侵入や放火といった治安上の問題などから近隣住民の迷惑となります。
また、そのような状態になってしまいますと、不動産としての価値がなくなり、賃貸や売却により利益を得ることも困難になってしまいます。
空き家対策特別措置法とは
しかし、このような状態で放置される空き家は、年々増加する傾向にあります。
こうした状況を受けて放置された空き家による周辺地域への影響を改善すべく、2015年に「空き家対策特別措置法」が制定されました。
これにより自治体は、倒壊の危険性や衛生上の問題を有する空き家の撤去や修繕を命令・勧告できるようになりました。
勧告を受けると固定資産税の優遇措置から除外されて、最大6倍もの税金を支払うこととなり、また、命令に応じなければ、50万円以下の過料が課される可能性があります。
状況の改善が見られなければ、自治体は空き家を解体することができます。
更地にするにしても解体費用が発生しますし、更地のままでは、固定資産税の優遇処置は受けられません。
こういった事態を回避するためにも、空き家は賃貸物件として活用するなど、日ごろからしっかり管理しておくことが大切です。
老朽化がそれほど進んでいない空き家であれば、リフォームを施して売却することも可能です。
しかし、空き家の老朽化が進んで管理が難しい場合は、空き家を解体して更地を売却することを考えなくてはなりません。
とは言え、空き家の解体工事費用は決して安くはありませんし、できるだけ出費は押さえたいものです。
そこで、ここからは空き家の解体に利用できる補助金についてご解説していきましょう。
空き家の解体費用を抑えたい!補助金は支給されるの?
地方自治体による「空き家等再生推進事業」とは
一時期、国土交通省から個人に対して、空き家解体の補助金や助成金が交付されるといった噂が流れましたが、これは誤りです。
国が取り組む空き家対策事業は「空き家等再生推進事業」と呼ばれるもので、こちらは地方自治体が対象となっています。
この事業では、地方自治体が居住環境の改善や整備を目的として、個人などによる空き家の除去およびその費用に補助金や助成金を交付する場合、国費から自治体に対してその費用の1/2または1/3がまかなわれます。
したがって、個人が空き家を解体する際には、補助金の窓口はその空き家のある地方自治体となります。
「空き家等再生推進事業」の要件
補助金交付の条件は自治体により異なり、自治体による認定や診断が要件とされる場合があります。
多くの自治体で提示されている要件としては、以下のようなものがあります。
●昭和56年5月以前の建築物であること
●耐震診断により倒壊の危険性が認められること
●申請者が税金を滞納していないこと
●工事着手前に申請すること
また、立地や施工を依頼する工事業者についての条件が課されることもあります。
さらに、補助金額も1/5から1/2と、自治体によって差があります。
こうした補助制度には災害時の安全性を向上させる意味合いも含まれています。
自治体によっては空き家解体が補助対象とならなくても、ブロック塀の除去など空き家のある土地を更地にするための事業の一部が補助対象となることがあります。
空き家の解体をお考えの方は、まず、自治体の建築関係の窓口やホームページで問い合わせてみるとよいでしょう。
補助金以外で解体費用を節約する方法も
また、補助金以外にも、空き家の解体工事費用を節約するためにできることがあります。
まずは、工事前に空き家内の不用品は処分しておきましょう。
業者が工事に着手したときに家の中に不用品が残っていると、別途処分費用を請求される場合があります。
解体工事の業者を探す際に複数の業者から相見積もりをとると、価格競争によるコストダウンが期待できます。
空き家を解体せざるを得なくなった場合は、補助金やこのような方法を併用すれば、できるだけ費用を抑えることができます。
空き家の解体に使える補助金って?種類や自治体ごとの例をご紹介
それでは、最後に空き家を解体に活用できる補助金の具体例を見ていきましょう。
老朽危険家屋解体撤去補助金
老朽危険家屋解体撤去補助金は、老朽化による倒壊の可能性がある危険家屋の撤去を対象に、費用の1/5から1/2が助成される制度です。
補助金が支給されるためには、自治体による診断および認定が必要となります。
いくつかの自治体の老朽危険家屋解体撤去補助金の例を挙げてみましょう。
●東京都足立区の老朽家屋等解体工事助成
昭和56年5月31日以前に建設された家屋を解体する場合に、改修内容や実施地区に応じて、解体費用の1/2までが支給されます。
●愛知県名古屋市の名古屋市老朽危険空家等除去費補助金
限度額60万円、工事費用の1/2以内が助成されます。
都市景観形成地域老朽空き家解体事業補助金
都市景観形成地域老朽空き家解体事業補助金は、都市の景観の保守を目的とし、長期間放置された家屋の解体事業に対して支給される補助金です。
支給額は費用の1/5から1/2で、家屋の所有者や相続人には工事後、景観基準を満たす利用方法が義務付けられます。
建て替え建設費補助金
建て替え建設費補助金では、老朽化家屋の除去およびその後の基準を満たす住宅建設に対し、その費用の一部を助成します。
自治体の定める質の高い住宅としての基準をクリアしていることが条件となります。
この建て替え建設費補助金の事例としては、大阪府大阪市の空家利活用改修補助事業があります。
この補助事業では、2000年5月31日以前建設の木造家屋の改修工事について、限度額を一戸あたり75万円として工事費用の1/2以内が助成されます。
また、大阪市の民間老朽住宅建替支援事業制度を利用すれば、道路幅の狭い道に面した老朽化住宅の解体費用も助成の対象となります。
以上のように、空き家の解体に支給される補助金には自治体ごとに様々な種類や要件があります。
空き家の管理にお悩みの方は、まずはその空き家がそのままの状態で活用できる状態なのかを判断したうえで、改修するか、解体するかを決める必要があります。
解体すると判断された場合には、まず、空き家のある自治体にはどのような補助金があるのか、役場の建設課やホームページで確認しましょう。
そのうえで、ご自身が活用できる補助金の要件に沿って、家屋内の不用品の事前処理や解体業者からの相見積もりをとるなどの対策をとれば、空き家の解体費用を抑えることができます。
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