土地や空き家を所有する際、購入だけでなく、相続により取得する方もいますよね。
「成り行きで相続したけど、名義変更は済んでいない」
「あれから時が流れて、もう誰が事実上の所有者なのかわからない」
このような状態にある土地や空き家は、所有者不明となっていることも珍しくありません。
所有者不明の土地や空き家には、私たちに関係のある問題が潜んでいるのをご存知ですか?
今回は、所有者不明の土地や空き家の問題点や、この問題を解決するために進められている対策についてご紹介します。
土地や空き家でいう所有者不明とはどんな状態のこと?
まずは、所有者不明とはどんな状態なのかみていきましょう。
所有者不明とは、その名の通り「持ち主がわからない状態」のことです。
土地や空き家などの不動産の場合、持ち主の確認は登記簿で行います。
登記簿とは、全国の土地や建物の状態が記されている公的な帳簿です。
いつ誰が取得したのか、どこにあるのか、土地や建物がどんな種類なのかなど…。
また、登記簿には抵当権や貸借権の有無まで細かく載っています。
この登記簿を確認しても所有者が判明しない場合や、連絡がつかない場合、その土地や家は「所有者不明」となるんですね。
登記簿を確認しても所有者が判明しない例として、所有者がすでに亡くなっているケースがあります。
本来ならば、所有者が亡くなった時点で相続人が名義変更を行い、所有者が変わったことを記載しなければなりません。
しかし、相続登記の名義変更は絶対的な義務ではないので、登記申請をしない方もいるんですね。
登記簿に登録されている方が亡くなっていると判明したら、行政はその不動産を相続されている可能性のある方に連絡をとります。
それでも所有者が判明しない場合、最終的に「所有者不明」として扱われるんですね。
相続をした方がきちんと登記申請をしないと、所有者不明の土地や空き家は増えていくばかりなのです。
所有者不明として判断されるもうひとつの要因は、連絡がつかないときです。
たとえば、共有相続のため所有者が多くなり、その内何人かの所在が不明なケース。
また、登記簿に登録されている方が海外に住んでいて、直接連絡がとれないケースなどが当てはまるといえそうです。
つまり、所有者不明土地や空き家が発生する主な原因は2つ。
●相続による登記手続きをしていない
●そもそも相続の話し合いをしておらず、不動産が共有状態のままである
自分が所有する土地や空き家が、このような状態になる可能性はないか注意が必要ですよ。
土地や空き家が所有者不明である弊害とは?
所有者不明になる原因は相続関係が多いとわかりました。
そうは言っても、所有者不明の何が問題なのかよくわからない方もいると思います。
「相続登記は義務じゃないし、そのままにしていても大丈夫じゃない?」と考えている方もいるでしょうか。
そこで、土地や空き家が所有者不明である弊害についてまとめてみました。
地域の発展ができない
近年、人口減少や少子高齢化にともない、地域のあり方が変わってきています。
民家体験泊を利用した産業振興や、空き家バンクを利用した定住支援など、土地や建物を活用した地域再生の取り組みも盛んに行われているんですね。
再開発や地域再生といったこれらの公共事業は、地域の発展のために大切な取り組みです。
これらの政策を進めようとしている地域に、所有者不明の土地や空き家があったら…。
工事や開発は勝手に進められないので、不動産の権利移転などの手続きを行う時間とコストがかかります。
地域の発展を進めるうえで、弊害となってしまうんですね。
災害時の対応が遅れる
土地や空き家の所有者不明が注目され始めたのは、2011年の東日本大震災のときです。
集団移転や土地の区画整理などの復興作業をする際に、所有者不明の土地が障害となったといいます。
記録されている帳簿から土地や建物の所有者がわからないと、作業が混乱するのもうなずけますよね。
所有者不明の土地や空き家は、平常時であればそこまで気にかけないものかもしれません。
しかし、災害時になるとその弊害が目立ちます。
災害とは、なにも震災だけではありません。
たとえば、このようなケースがあります。
●大雨や台風により空き家の屋根が飛んで他人を傷つけた
●長らく放置されていた空き家が倒壊し、近隣住人に損害を与えた
これらも、天災や人災といった災害に当てはまりますよね。
所有者が不明であれば、こうした緊急時の対応も難しくなってきます。
土地や空き家が所有者不明であることの弊害について理解していただけましたか?
具体的な弊害の内容がわかると、所有者不明がなぜ問題となるのかわかりやすいですよね。
所有者不明の場合、開発のチャンスを失ったり、災害発生時に時間やコストがかかります。
またそれどころか、行政としては徴税の妨げにもなるので、経済的な損失にもなります。
個々人の小さな行動が、結果として地域や全国規模での弊害を招いているんですよ。
所有者不明空き家への対応や対策について
このように、所有者不明の土地や空き家を放置しておくのは弊害があるため、国もその対応や対策を考えています。
具体的な対応事例として、相続財産管理人制度の活用があげられます。
相続財産管理人制度とは、相続放棄などにより遺産を管理する相続人がいない場合に管理人を選任し、その方が相続財産の管理を行う制度。
利害関係人が裁判所に申立てを行うことで、管理人を選任できるしくみです。
ここでいう利害関係人とは、主に、特定遺贈を受けた者や特別縁故者などで、相続や権利に関係のある人が申立てを行います。
しかし、所有者不明の空き家に関しては、自治体が利害関係人となり申立てをします。
所有者不明の空き家は、自治体が主体となって問題に対応しているんですね。
この制度により所有者不明の土地や空き家が円滑に活用されているかといえば、実はそうでもないのが現状です。
現在の財産管理制度では、特定の土地や空き家だけでなく、他の財産についても管理しなければならないと定められています。
そのため、コストがかかってしまう難点があります。
また、土地や空き家の所有者が共有状態にあり、その内何名かが不明な場合は、不明な所有者の数だけ管理人を選任しなければなりません。
こちらもまた、コストがかかってしまいます。
そのため今後の対応として、財産管理人制度のしくみを変えていく方策も検討されている状況です。
現状の制度を変えるにしても、所有者不明であること自体が、コストのかかる要因であることに違いはありません。
そこで今後の対策としては、そもそも所有者不明を発生させない制度をつくることがポイントになっています。
そのひとつが、相続登記の義務化です。
相続による登記申請を義務化し、誰の土地・建物であるか明確にすることで、所有者不明の状態は減少すると考えられています。
義務化にあたって登記申請しやすくなるような対策も検討中とのこと。
また、土地所有権を放棄したり、遺産分割に期限の制限を設けたりといった案も考えられています。
これらは、2018年に成立した「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」に関連する取り組みです。
所有者不明問題を解決するには、現在発生している不動産の対応と、今後所有者不明土地・空き家が発生しないような対策が必要とされています。
私たちが今できることは、土地や空き家を所有したら登記申請をすることですよ。
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まとめ
所有者不明の土地や空き家が増えると、私たちの生活に支障をきたす恐れがあります。
その問題を拡大させないために、国や自治体はさまざまな対応を進めているんですね。
この問題は、短時間ですぐに解決できるものではありません。
しかし、弊害のリスクを抑えるには、すぐにでも解決したい問題といえるでしょう。
所有者不明の原因は、未登記によるものが多くあります。
ひとりひとりが相続登記への意識を高めていけたら、少しでも解決に近づくかもしれませんね。
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