人が住んでいる家であれば、自然災害、盗難、事故など、万が一のときに備えて火災保険に加入するのが一般的です。
それに対して、親が亡くなり田舎の家を相続した、転勤が決まって家を空けることになったなどの理由で、空き家となってしまうこともあります。
火災保険に加入すると保険料を支払う必要があるため、住んでいないから入らなくてもいいかな、と思うこともあるでしょう。
しかしながら、所有している以上、家を管理する義務が発生するため、火災保険に加入したほうがいいというのが基本です。
そのうえで、どうして火災保険に入ったほうがいいのか、空き家ならではの火災のリスク、補償内容などを含めて解説します。
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▼空き家の火災保険の必要性①:入ったほうがいい理由
親から相続したものの、遠方に住んでいるため住む予定がなく、資産的価値も低い家の場合、空き家になってしまう確率が高くなります。
しかし、たとえ住んでいなくても、その家の管理責任は所有者にあるため、自然災害、火災、事故などで倒壊したら、撤去費用などを支払わなければなりません。
また、建物の一部が倒壊する、強風で屋根が吹き飛ぶなどして、他人や周囲の家に被害を与えてしまった場合、その賠償責任も家の所有者が負うことになります。
とくに注意したいのは、人が出入りする機会が極端に少ない空き家は、長く所有すればするほどトラブルや犯罪に巻き込まれるリスクが高まるという点です。
通行人がポイ捨てしたタバコが原因で出火し、火が燃え広がってしまっても、空き家であると発見が遅れかねません。
また、空き家だからと不審者が出入りし、遊び半分で放火されることも決してないとは言えないのです。
そのため万が一のときに備えて、たとえ資産価値が低い空き家であっても、火災保険に加入する必要性は高いと言えるでしょう。
そして、転勤などにより一定期間だけ家を空けることになった場合も同様です。
不在のあいだに台風などで家が倒壊する、火事により周囲に被害を与えることがあったら、やはり所有者に責任が発生します。
転勤の期間が終わったら、特別な事情がない限りは、その家に戻ることになりますが、修繕あるいは建て直し費用を用意できなければ、帰る家自体がなくなってしまいます。
そのため、空き家となる期間が限られている場合も、万が一のときに備えておいたほうが安心でしょう。
ただし、すべての火災保険が空き家を対象に含めているわけではありません。
空き家の状況によっては火災保険に入れないケースがありますので、まずは加入できるかどうか確認することをおすすめします。
▼空き家の火災保険の必要性②:放火のリスク
空き家を所有していると、自然災害や偶発的な事故など火災の原因はさまざまですが、とくに注意を払う必要があるのが放火です。
一般の住居よりも管理が行き届かない空き家は、不審者に放火されやすい状況が生まれやすいことがその理由です。
とくに、空き家であることがわかる、さらに燃えやすいものが大量にあると、放火犯に狙われやすくなります。
たとえば、雨戸が閉まったままになっていると、「この家は空き家である」と言っているようなもの。
大量のチラシが投函されたままで、さらに雑草や草木が生い茂っていると、空き家であることを確信させるのみならず、簡単に放火できてしまいます。
さらに、周囲に他の家がない、門扉や壁がない、窓ガラスが割れていると、簡単に敷地内に侵入できるため、放火されるリスクがさらに高まります。
管理が行き届いていない空き家は、このような状況が簡単に生まれてしまうため、火災が引き起こされやすいと言えるのです。
このようなリスクに備えるため、火災保険に加入することは大切ですが、同時に対策を講じておくことも必要です。
もっとも大切なことは、その家が空き家であると分からないようにすること。
可能であれば空き家に定期的に通い、放火犯に目をつけられやすいものを取り除くようにしましょう。
郵便ポストのチラシを捨てる、庭の雑草を抜く、玄関の照明を取り換える、不法投棄のゴミを片付けるだけで、その家は人が住んでいるように見えます。
とくにチラシや雑草のような燃えやすいものがあると、放火犯の欲望をかきたてるため、重点的に取り除くことがポイントです。
遠方に住んでいるなど、定期的に空き家に行くことが難しい場合は、近所の人や業者に依頼することも一案です。
それに加えて、放火犯が近づきにくい状況をつくることも、空き家を所有するうえで不可欠な対策となります。
たとえば、塀がない家であったら、敷地をフェンスで囲んでおくだけで、侵入されにくくなります。
また、人感センサーライトを設置しておけば、人がいるように見せかけられるため、夜に侵入することを防げるでしょう。
さらに、灯油、ガス、電気など、火が燃え広がりやすいものは、あらかじめ使えないようにしておくことも大切。
万が一放火されたときも、延焼のおそれが少なくなり、周囲に与える被害を最小限にとどめることにつながります。
▼空き家の火災保険の必要性③:補償内容
通常、個人が所有する建物は、人が住む住宅物件と店舗やオフィスなどの一般物件に分けられます。
空き家の場合、定期的に管理できる、あるいは一時期だけの不在という場合と、住む予定がまったくない場合とで、物件の分類が変わります。
定期的に管理できる、あるいは一時期だけ不在となる空き家は、住むことが目的と見なされ、住宅物件に分類されます。
火災保険の種類は、住宅火災保険が基本プランとなり、補償範囲を広げると住宅総合保険に加入することになります。
管理もできず住む予定もない空き家は一般物件と見なされ、店舗やオフィスと同じ扱いになります。
その場合、普通火災保険が基本プランとなり、補償範囲を広げると店舗総合保険の加入となります。
住宅物件に分類された場合は地震保険に加入できますが、一般物件に分類された場合は加入できません。
さらに、廃屋のように荒れ果てた状態になっている家は、火災保険に加入できないことがあるため、事前に問い合わせる必要があるでしょう。
基本的にどちらの物件に分類されても、補償内容に大きな違いはありませんが、保険料に関しては一般物件のほうが高額になります。
火災保険の補償プランの基本は、火災、落雷、ガス爆発、そして風災を対象とするものです。
それを基本に、大雨などによる水災、自動車の飛び込みなどの事故、設備不良による水漏れ、意図的な破壊や盗難など、必要に応じてオプション補償を加えることが可能です。
空き家の場合、管理が行き届きにくいことから、オプション補償を検討することが望ましいのですが、補償される範囲が広くなればなるほど、保険料の負担が大きくなってしまいます。
そこで、火災保険に加入するさいは、自分がどのくらい管理できるのか、近隣の人や業者に依頼できることはあるのかを、まず整理してみましょう。
そのうえで、自分が所有する空き家にどのような火災やトラブルのリスクがあるのかを検討し、補償の範囲を決めていくといいでしょう。
▼まとめ
空き家を所有していても、実際に住んでいなければ、どうしても管理がおろそかになり、火災に見舞われるリスクが高まります。
住んでいない家に対して保険料を支払うことに躊躇することもあるかもしれませんが、いちど火災が起きたら周囲の家まで被害を拡大させてしまうことも。