空き家問題が加速し、深刻な社会問題となりつつあります。
各自治体でも空き家対策特別措置法といったさまざまな対策をおこなっており、民間業者による空き家ビジネスも増加中です。
そこで今回は空き家を所有している方にむけ、空き家を活用したビジネスモデルをテーマに、失敗事例や事業展開の実態について見ていきます。
東京都の起業家による空き家活用法や、北海道下川町といった小さな街でも成立するビジネスモデルをご紹介しますので、ぜひご覧ください。
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▼空き家の実態は?事業展開におけるビジネスモデルと失敗事例
なぜ空き家が増加しているのか、まずはその実態を見ていきましょう。
2019年に国土交通省がおこなった住宅および土地統計調査によると、全国にある空き家の数は約846万戸という結果が出ました。
これは総住宅数に対して13.55%という割合で、過去最高の空き家率となっていますが、実は空き家は1963年から右肩上がりで常に増え続けている状況です。
<空き家が増えている理由>
・高齢化による転居
空き家が増える理由の1つに、所有者の高齢化が挙げられます。
住んでいた人が老人ホームや子どもの住居に引っ越しをすると、必然的に空き家が生まれますよね。
戸建ては2階への上り下りが大変ですし、築年数の経過した住宅はバリアフリー設計でない可能性もあるでしょう。
認知症や介護が必要になると、老人ホームなどの施設に入居する人もグッと増えます。
・居住者の死亡
高齢化も理由の1つですが、最後に住んでいた人が死亡したあと放置されるのも大きな要因です。
最後に住んでいた人(所有者)が死亡すると、基本的に不動産は相続が発生します。
相続しても住んでいる場所が遠かったり、資産価値がほとんどなかったりすると、空き家として放置される場合があるでしょう。
また相続人同士で共有持ち分になったとき、売却するためには全員の承諾が必要です。
相続人全員の承諾が得られない場合は、売却や賃貸に出すといった活用もしにくくなるので、空き家のままになってしまいます。
自己居住用の戸建て持ち家では、高齢者の死亡や引っ越しがきっかけで空き家となるケースが多いということがお分かりいただけたでしょうか。
では空き家で事業展開をおこなう実態は、ビジネスモデルを含めどのようになっているのでしょうか。
実際のところ空き家の増加と比例するように、空き家を活用するビジネスモデルが登場し、収益を上げている法人や個人が存在します。
しかしその反面、失敗している方も多いのも事実です。
空き家ビジネスに新規で参入する企業が増えた背景として、以下のことが挙げられます。
<不動産取得税の減税>
不動産取得税とは、土地や建物などの不動売買や贈与時に発生する税金です。
これは空き家の売買にも同じように発生する税金で、土地や建物の税額は固定資産税評価額×4%(標準税率)で算出します。
しかし不動産取得税を減税する特別措置により、2021年3月31日までに取得した不動産であれば、3%に引き下げられることになりました。
<登録免許税の引き下げ>
登録免許税とは、不動産の売買や贈与時におこなう不動産登記に必要な税金です。
不動産の取得時に発生する税金を軽減する措置で、軽減税率は項目ごとに決まっています。
これまでは空き家の購入に不動産取得税がかかり、空き家を修繕もしくはリフォームして売りに出すと、登録免許税がかかっていました。
空き家の売買には、一般的な不動産売買に比べて税金が多くかかるため、空き家を利用したビジネスに参入しにくいという実態があったのです。
そのため空き家のビジネスモデルを持つ個人や法人の税金負担を軽減し、空き家の利活用を活性化しようと、減税措置の実施を決めました。
次に空き家を事業展開した人の失敗事例を見ていきましょう。
<脱サラして郊外の空き家を定食屋に>
Aさんは親から国道沿いにある郊外の空き家を譲り受けましたが、何かしらの事業をおこなおうと考え、夢だった定食屋を開店しました。
空き家の近くに駅はありませんが、観光地があります。
ビジネスモデルの構築やプロモーションの知識はありませんでしたが、退職金をすべて使い、思い切って開業しました。
しかし経営はうまくいかず、赤字が続いたため負債を背負った状態で廃業することになったそうです。
なぜこの事業が失敗したかというと、以下の理由が考えられます。
・やりたいことを優先したビジネスモデルで事業を開始した
・ニーズや地域特性をつかまなかった
・事業でどの程度の収益、コストがかかるのかを考えなかった
観光地が近いという地域の特性を生かすといった、入念なビジネスモデルの構築をおこなっていればよかったのかもしれませんね。
▼東京都の起業家による空き家活用のビジネスモデル
東京都では、空き家を活用した事業プランを考える起業家を支援しています。
これは空き家活用のモデル事業を実施し、空き家を有効的に活用しようという制度で、新たなビジネスモデルとなるかもしれないプランを、まずは東京都の起業家から募集します。
審査をおこない、空き家の利活用に有効と認められた場合は各種支援が実施され、起業家は活用したい空き家でビジネスを開始できる仕組みです。
さらに東京都の起業家が活用したい空き家を見つけ次第、コーディネーター(不動産業者)が所有者と連絡を取り合い、調整をおこないます。
条件がマッチすれば、起業家と空き家の所有者は賃貸借契約などを締結し、空き家を有効的に活用できるでしょう。
ちなみに2019年度の採択事業は2件です。
採択された事業プランに空き家を提供した所有者(法人を除く)には、管理費相当額(固定資産税や都市計画税)が補助されます。
補助期間は事業プランが採択された翌年から3年間(最大)で、補助率は1年目で10分の10、2年目は3分の2、3年目で3分の1です。
▼下川町などの小さな街における空き家のビジネスモデル構築
東京都だけでなく、下川町といった小さな街でも空き家のビジネスモデルは成立します。
下川町など過疎地域と呼ばれる場所では、不動産価値の低さや物件の流通量が少なく、不動産事業が成立しない状況です。
それが空き家を増やす要因にもつながっていると考えられるでしょう。
そのため「下川町ふるさと開発振興公社」では、空き家の所有者と空き家の希望者をつなぎ、空き家の管理や修繕を工務店に任せて、空き家ビジネスを構築しようと試みています。
また空き家ビジネスの構築には、状態の良い中古物件が最適と考え、住民に対して住宅長寿命化の意識啓発をおこなっているのが特徴です。
下川町がおこなっているビジネスモデルは、まずは需要家から空き家のニーズを聞き出すことからはじめます。
上記をもとにニーズに合った物件の改修プランを立て、空き家の所有者に活用を促す提案をするのです。
行政機関や地元の金融機関、工務店だけでなく、商工会や不動産会社、建築専門家など、たくさんの連携先により空き家対策のビジネス構築がされています。
実際の不動産流通や改修実績など、実態に基づく根拠を使ったビジネスシミュレーションで、有効的な空き家ビジネスが現実的になるでしょう。
▼まとめ
この記事では空き家を所有している方にむけて、空き家を活用したビジネスモデルをテーマに、事業展開の実態や失敗例などを見ていきました。
東京都では空き家を利活用したい起業家を支援していますし、下川町などの小さな街でも有効的な空き家ビジネスを構築することが可能です。
空き家問題を解決すべく、現代のニーズに合わせて有効的な空き家活用ができるといいですね。
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