長いあいだ放置している空き家があるものの、すでに別の地域に家を所有しているため住む予定がまったくないなど、その取扱いに困っている人もいるのではないでしょうか。
空き家をそのままにしておくと、固定資産税の支払いが続くのみならず、家の管理をめぐって近隣住民とトラブルになる可能性もあります。
そこで茨城県の常陸太田市では、空き家の活用を促すために、空き家・空地バンクの「じょうづるホーム」を立ち上げました。
「じょうづるホーム」を利用することで、空き家を取得したい人にむけて、物件情報を発信できるのみならず、交渉や契約をサポートしてもらえます。
そこで、空き家バンクとはどのような制度なのかおさらいしたうえで、「じょうづるホーム」のサービス内容や関連する助成金などを解説します。
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▼常陸太田市の空き家バンク①:空き家バンクについて
空き家とは、誰も住んでおらず、1年間まったく人が出入りしていない家のことを指します。
両親が亡くなったあと子どもが家を相続したものの、住んでいる地域から遠いなどの理由から処分するタイミングを失い、空き家となってしまうケースが目立ちます。
そのような状態の家は、雑草などで景観を損ねる、倒壊や火災などのリスクが高まる、犯罪に利用される恐れがあるなど、周囲に不安を与えかねません。
どれだけ家の状態が悪くても、所有者の許可がなければ行政は立ち入ることができず、長きに渡って社会問題となっていました。
空き家問題に対応するため、平成26年11月に国会で「空家等対策の推進に関する特別措置法」が成立。
水道、ガス、電気などの利用状況から、1年間まったく人の出入りがないと判断されたら「空き家」と認定され、改善を勧告できることになりました。
勧告を聞き入れず家を放置しておくと、土地にかかっている固定資産税の優遇措置が適用外になります。
このように経済的な負担が大きくなる可能性から、空き家を手放すことを希望する所有者が増えてきました。
そこで、空き家の所有者と移住希望者のマッチングを図るために、自治体を中心に立ち上げられたのが「空き家バンク」という制度。
空き家バンクとは、賃貸や売却を希望している所有者の物件情報を取りまとめ、それを活用したいと考えている人に紹介する仲介サービスです。
常陸太田市も、市内外の住民の交流を促進する、市外からの移住を増やすことを目的に空き家バンクの制度を整備しました。
安い価格でマイホームを取得できるため、空き家が有効活用できれば、地域に子育て世代を誘致できます。
また、都市部の若者を中心に、起業したい、田舎暮らしをしたい、自分のペースで働きたいなどの理由から、地方移住に興味を持つ人が増加。
地域の少子高齢化や過疎化が解消され、地域を活性化できる可能性から、空き家の利用促進に力を入れる自治体が増えているのです。
▼常陸太田市の空き家バンク②:じょうづるホーム
常陸太田市が運営している空き家・空地バンクが「じょうづるホーム」。
「じょうづる」とは、もともと子育て上手常陸太田推進隊宣伝部長で、平成26年に市の公式マスコットキャラクターとなった「じょうづるさん」に由来する言葉。
「じょうづるホーム」は、地域の情報提供、移住者の就業支援、子育て支援などと合わせて利用できます。
売却・賃貸できる空き家情報を、常陸太田市のウェブサイトを通じて公開、希望者を募ることが「じょうづるホーム」の趣旨。
「じょうづるホーム」は、以下で説明する通り、申し込みから交渉成立までの流れがあらかじめ決まっています。
<じょうづるホーム登録の流れとは?>
まず、空き家の所有者が「じょうづるホーム」に物件登録を申し込みます。
物件登録できるのは、空き家もしくは空き地を所有しており、それを売却あるいは貸し出しする意思がある人。
常陸太田市のホームページから申請書をダウンロードし、必要事項を記入のうえ、市の少子化・人口減少対策課へ提出します。
物件登録の申し込みが受理されたら、常陸太田市の担当者および仲介業者が、空き家の状態を調査します。
現地調査を通じて、空き家は住める状態なのか、大規模な修繕を要するのかを検討し、ウェブサイト掲載用の写真を撮影します。
現地調査の結果、ウェブサイト掲載が可能と判断されたら、所有者にその旨の通知を送り、空き家情報が「じょうづるホーム」にて登録・公開されます。
空き家を探している人は、ウェブサイトで気に入った物件を見つけたら、利用登録したうえで交渉を申し込みます。
申し込みが受け付けられたら、「じょうづるホーム」から空き家の所有者に通知が送られ、連絡および交渉がスタート。
このとき連絡・調整を担当するのは、常陸太田市と協定を結んでいる、茨城県宅地建物取引業協会と全日本不動産協会茨城県本部となっています。
この時点では、市の担当者はあいだに入らず、常陸太田市に委託された仲介業者のサポートのもと、契約成立を目指していきます。
▼常陸太田市の空き家バンク③:関連する助成金
常陸太田市では、空き家バンクに加えて、その利用を促すために各種助成金を用意しています。
<空き家リフォーム工事助成金>
空き家の売却や賃貸を希望する人に向けた制度が「空き家リフォーム工事助成金」です。
この助成金は、常陸太田市内にある空き家の利用を促すため、リフォーム費用の一部を予算の範囲内で補助するというもの。
助成額は、リフォーム費用の総額に2分の1を上乗せして算出された金額で、100万円が上限となっています。
助成対象となるのは、基礎、外・内壁、屋根、天井、床のリフォームのほか、水回り、電気、ガス、通信などの設備工事、レイアウトの変更などです。
空き家のリフォームを検討している人は、どのような工事が助成対象となるのか、あらかじめ窓口に問い合わせておくと安心でしょう。
<空き家家財道具等処分費用助成金>
もうひとつの支援制度が「空き家家財道具等処分費用助成金」です。
空き家に残っていた家財道具を処分する費用の一部を支援するという制度です。
助成対象となるのは、家財道具を処分する経費のほか、ごみ処理手数料や運搬料金、家電等のリサイクル料金など。
廃棄物処分業者に依頼する場合、その委託料も助成対象に含まれますが、市から許可を受けている市内業者であることが条件です。
助成額は上限が20万円で、対象となる経費の総額に10分の10を上乗せして算出されます。
<空き家・空き地見守り費用等助成金>
また、空き家の活用を目指そうと思っても、すぐ売却や賃貸の契約が決まらないこともあるでしょう。
そのようなときに利用できる制度が「空き家・空き地見守り費用等助成金」。
これは、常陸太田市内にある空き家を管理するための費用の一部を支援するという制度です。
助成対象となるのが、家屋の点検、除草、剪定、伐採などに要した費用。
こちらの助成金を利用する場合も、市内業者に委託していることが前提です。
3つの制度を利用するためには、「じょうづるホーム」に物件登録している必要がありますので、まずは空き家を登録する作業から始めましょう。
<住宅取得促進助成金>
移住希望者に対しても「住宅取得促進助成金」という制度が用意されています。
助成対象となるのは、子育て世代や、子育て世代と同居するために常陸太田市内の住宅を購入した人。
空き家の購入者も支援を受けられるため、交渉をすすめる過程で後押しになるかもしれませんね。
▼まとめ
空き家が効果的に活用されることで、家の所有者の負担が少なくなるのみならず、移住者が増えて地域が活性化する可能性がひろがります。
そのため自治体は、空き家バンクとあわせて、空き家の所有者と取得希望者をサポートする制度を充実させつつあります。