過疎化や少子化、高齢化により、空き家の数が年々増加しており、大きな社会問題となっています。
なかでも問題なのが放置された空き家です。
放置空き家は、築年数が古く旧耐震基準で建てられた住宅がほとんどで、震災や災害が発生すると大変危険で、近隣住民にも被害をもたらしてしまう可能性が高くなります。
なかでも日本は地震の多い国であるため、空き家の震災には注意が必要です。
今回は、空き家と震災の関係について説明します。
空き家の震災対策についても紹介しますので、早めに対応しておきましょう。
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▼震災で空き家は危険になる…空き家を放置するとどうなるのか
日本は地震が多い国であり、震度4程度の地震が頻繁に発生しています。
大地震による震災では、建物の倒壊によるものがほとんどであったため、1981年に建築基準法が改正され、新耐震基準が設定されました。
しかし、放置空き家のほとんどは旧耐震基準で建設された住宅が多く、震災時には大変危険です。
放置された空き家は、震災が発生していなくてもさまざまなトラブルが起こります。
まず、空き家を放置するとどのような危険やリスクがあるのかを知っておきましょう。
<放置された空き家が危険な理由とは?>
放置空き家が危険といわれる大きな原因は、老朽化による倒壊です。
古い空き家は、旧耐震基準で建てられた木造住宅がほとんどです。
まったく管理されていない空き家は老朽化が進んでいる状態で、柱や梁、基礎などが傷んでもろくなっているため、小さな地震や台風でも倒壊してしまう危険があります。
大地震に見舞われたときの被害を考えると、恐ろしいですね。
また、震災だけではなく、今にも倒壊しそうな空き家は、積雪による雪の重みなどでも簡単に倒壊してしまい、とても危険です。
空き家は誰も住んでいないから被害は出ないと思う方もいるかもしれませんが、空き家が震災で倒壊すると、近隣住民などに多大な被害を与える可能性があるのです。
空き家の前を歩行者が通過中に、震災などで空き家が倒壊してケガを負わせたり、死亡させたりすることも考えられます。
そうなると損害賠償請求の裁判を起こされ、多額の損害賠償金の支払いを命じられます。
ほかにも、空き家を放置すると住宅がボロボロに老朽化していたり、雑草が伸び放題になっていたりと、地域の景観を乱してしまいます。
放置空き家がある地域は、管理されていない地域というイメージが定着してしまい、地域全体の治安を悪化させてしまうのです。
治安が悪化すると、空き家の不法占拠や不法侵入、放火などの犯罪が発生しやすくなってしまいます。
不動産を適切に管理するのは、所有者の義務ですから、空き家は放置せずに、しっかりと管理を行う必要があります。
▼空き家が震災で被害に遭ってしまった際にすべきこと
空き家が震災の被害に遭い、倒壊してしまったらどうすればよいのでしょうか?
一般的な住宅なら、地震保険に加入していることが多く、まず保険会社に連絡を入れなければなりません。
しかしながら、空き家の場合は、誰も住んでいないため「地震保険に関する法律」により、適用除外となるため、地震保険に加入することはできません。
空き家が震災に見舞われ、倒壊してしまったら火災などの二次災害を防ぐことが重要です。
空き家が震災で倒壊してしまったら、危険性がより高くなるため、そのまま放置しておくことはできません。
また、倒壊した空き家の解体工事や瓦礫の撤去作業などを専門業者に依頼する必要があります。
空き家のある自治体によっては、震災の被害に遭った場合は補助金が出るところもありますが、ほぼ自費になると覚悟しておいたほうがよいでしょう。
震災や災害で倒壊してしまった空き家の解体費用は、普通の空き家のそれよりも費用が高くなります。
廃材や瓦礫などが広い範囲にわたって飛び散っている可能性が高く、空き家から出た廃材は分別して処理しなければならないため、通常の解体よりも手間がかかり、解体費用が高くなってしまうのです。
震災で火災が発生し、焼けてしまった住宅の解体についても、解体作業中に倒壊する危険性が高いため、費用が割高になります。
▼空き家と震災及び災害の対策〜被害を少なくするにはどうすればいいのか
大地震では、震災の被害がとても大きくなってしまいます。
昭和53年(1978年)に発生した「宮城県沖地震」、平成7年(1995年)に発生した「阪神・淡路大震災」では、たくさんの住宅や建築物が倒壊し、ブロック塀などの損壊による被害が大きく、多数の死傷者が出ました。
このような大震災による被害の状況を考慮して、旧耐震基準の見直しが必要と判断され、新耐震基準がつくられたのです。
耐震基準とは、建築物を設計する段階で、地震に対する建築物の耐久構造の基準を示すものです。
震災による建物の倒壊を防ぐだけではなく、建物のなかにいる人の安全を確保することを目的として、新耐震基準は設定されました。
この新耐震基準では、「震度6以上の地震に耐えられること」が基準となっています。
空き家の耐震基準が旧耐震基準なのか、新耐震基準なのかを知るには、空き家の建築確認申請が受理された日にちを確認します。
建築確認の通知書の発行日が、昭和56年6月1日以降であれば新耐震基準であり、昭和56年5月31日以前であれば、旧耐震基準の建築物であると判断できます。
また、空き家は、築年数の古い物件が多いため、旧耐震基準で建てられているものがほとんどです。
国土交通省の調査によると、空き家の7割が旧耐震基準で建てられた建物であることがわかっています。
旧耐震基準で建てられた老朽化した空き家は、どうしても地震には弱く、倒壊のリスクが高くなります。
加えて、空き家は旧耐震基準でかつ木造住宅という構造のものが多く、小さな地震や台風や豪雨などでも簡単に倒壊してしまうケースも多いです。
空き家の震災や災害の被害を最小限に抑えたいのであれば、やはり空き家の耐震リフォームを行うことがおすすめです。
築年数の古い空き家がどのような状況なのかを知るためには、現在の新耐震基準にのっとって、「壁の強さ」、「接合部の状況」、「建物のバランスと劣化状況」を調査して、耐震性に対する総合評価を出す、「耐震診断」
を受けてみるとよいでしょう。
自治体によっては、「耐震診断」を行っている建築事務所を紹介してくれたり、支援金を補助してくれたりする制度もあるようです。
専門家による「耐震診断」により、空き家の状況やどのような耐震リフォームが必要なのかが分かれば、空き家にどんな対策を行うのがよいのかが理解できますね。
空き家の耐震リフォームを行えば、震度6以上の地震が発生しても、住宅が倒壊することはないため、震災による被害を最小限に抑えることが可能になるといえるでしょう。
震災だけではなく、台風や大雨などの自然災害に備えた空き家の管理を行うことがポイントです。
空き家の屋根や外壁のヒビや割れ、ベランダの排水溝や雨樋の詰まり、窓や雨戸のがたつきなどもしっかりとチェックしておくと安心ですね。
空き家は、人が居住しなくなると劣化が一気に進みます。
放置された空き家は、ネズミなどの害獣や害虫の被害にも遭いやすくなってしまい、近隣住民にも迷惑をかけてしまうことになります。
そのため、定期的に空き家に出向き、空気の入れ替えや、掃除などの適切な管理が必要なのです。
空き家が自宅から遠方地にある場合は、空き家管理業者などに依頼するとよいでしょう。
所有している空き家が、地震による震災で倒壊してしまい、近隣住民など他人に危害が加えてしまうと、空き家の所有者に責任が課されます。
空き家の管理は所有者の義務、責任であるため、震災で加害者にならないためにも、空き家の耐震基準を見直して改修したり、適正管理を行ったりすることがとても重要なのです。
▼まとめ
空き家の管理は、所有者の責任です。
震災などで空き家が倒壊すれば、多額の損害賠償を負うことにもなりかねません。