平成30年度住宅・土地統計調査の結果、全国の空き家の戸数は約846万戸と前回調査の数字を上回り、空き家の数が年々増加しております。
空き家は倒壊による災害や治安の悪化、衛生上の問題など、さまざまなトラブルを招く原因となってしまうため、国や自治体では空き家対策に力を注いでいます。
空き家の売却は、空き家活用のなかでも一般的な方法ですが、売却時の税金が心配という方も多いようです。
この記事では、空き家の売却時にかかる税金を減税する対策についてご紹介します。
空き家売却時に減税できる制度などをしっかりと把握しておきましょう!
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▼〇〇年以上所有していると控除?空き家と譲渡所得税
空き家を含め、所有している不動産を売却するときには、譲渡所得税がかかります。
譲渡所得税とは、不動産の譲渡益(不動産取引における価格と売却時の価格の差額により得られる利益、キャピタルゲイン)に対して課税される税金です。
さらに復興特別所得税と住民税がかかります。
空き家を売却するときの税金について、詳しくみていきましょう。
「税金 = 譲渡収入金額 -(取得費 + 譲渡費用)× 税率」で計算されます。
譲渡収入金額とは、空き家などの不動産を売却した代金のことで、固定資産税と都市計画税の精算金も含まれています。
取得費とは、不動産の購入金額、購入時にかかった仲介手数料など、その不動産を購入するときにかかった合計金額のことです。
譲渡費用とは、空き家などの「不動産を売却するためにかかった費用」のことです。
不動産会社への仲介手数料や売買契約書に必要な印紙代などがそれに該当します。
次に税率についてみていきましょう。
<譲渡所得税の税率>
譲渡所得税の税率は、空き家などの不動産を所有していた期間により異なります。
5年以上保有していた、空き家などの不動産を売却する際の譲渡所得税率は15%です。
しかし、所有期間が5年未満の場合の税率は、30%と倍になります。
さらに住民税も5%ではなく、9%になります。
空き家などの不動産を所有していた期間については、相続した不動産を売却する場合は、前所有者である親などが所有していた期間を含むことができます。
つまり、空き家相続直後に売却したとしても、親族などが5年以上その不動産を所有していれば、15%の長期譲渡所得の税率が適用されます。
空き家を所有している期間が5年以上なら15%の税率が適用されるため、減税につながるといえますね。
▼減税につながる?「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」について
空き家を含め、不動産を売却する際は、税金がかかってしまいます。
空き家売却時にかかる税金が負担となり空き家を売却せずに放置しているケースも多く、空き家の数が増えているのも事実です。
空き家を売却することで活用につなげるために、「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」という制度がつくられました。
「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」により、譲渡所得が大幅に減税されるため、相続によって空き家となってしまった住宅が売却しやすくなったのです。
「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」は、相続日から起算して、3年を経過する日の属する年の12月31日までに、被相続人の住居を相続した相続人が、当該家屋または空き家解体後の土地を譲渡した場合には、当該家屋または土地の譲渡所得から3,000万円を特別控除するというものです。
当該家屋とは、耐震性のない空き家の場合は耐震リフォームを行なったものであり、その敷地も含んだものです。
「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」が適用されると、譲渡所得から3,000万円が特別控除されるため、大幅な減税につながります。
この譲渡所得の特別控除の特例が適用される場合の計算式は、次のようになります。
「譲渡所得 = 譲渡収入金額 -(取得費 + 譲渡費用)-特別控除3,000万円」
長期譲渡所得(5年以上空き家所有)の場合だと、税率は所得税15.315%+住民税5%の合計20.315%で、「特別控除3,000万円×20.315%=6,094,500円」になり、約600万円も税金を減税することが可能になるのです。
▼減税につながる?「空き家の譲渡所得税3000万円の特別控除」とは
空き家を売却するときに、譲渡所得から3,000万円が特別控除される「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」ですが、残念ながらすべての空き家に適用されるわけではないため、注意が必要です。
しかし、この空き家に関する特例制度が適用されれば、かなり大きな減税につながるため、適用されるのかどうかしっかりと確認しておきましょう。
空き家の譲渡所得税が3,000万円特別控除される適応条件には、次のようなものがあります。
(1) 相続から譲渡までの間の直前まで、被相続人の居住用として供されていたものであること。
(2)相続の開始の直前まで、被相続人以外に居住をしていた者がいなかったものであること。つまり、被相続人がひとりで居住していたものであること。
(3)昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建築物は除く)であること。
(4)相続したときから譲渡するときまで、事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと。
(5)相続日から起算して、3年を経過する日の属する年の12月31日まで、ならびに特例の適用期間である「2016年4月1日から2023年12月31日」までに譲渡を行うこと。
(6) 譲渡価額が1億円以下であること。
(7)家屋を譲渡する場合は、当該譲渡時において、当該家屋が新耐震基準に適合するものであること。または解体されていること。
譲渡所得から3,000万円が特別控除される「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」を受けるためには、被相続人が逝去する直前までひとりで居住していた住居を相続し、相続してから空き家を賃貸などで家賃収入等が得られる事業利用をしていないことが条件です。
さらに、相続した空き家は旧耐震基準で建てられた住居であり、売却する前に新耐震基準に耐震補修されているか、解体されていることが必要です。
また、空き家を相続してから3年後の12月31までに売却し、その売却金額が1億円以下であることが条件となっています。
補足として、被相続人が介護保険法に規定する、「要介護認定等」を受けている、相続開始の直前まで、被相続人が老人ホーム等の施設に入所していた場合も、被相続人の居住の用に供されていたものとします。
被相続人の居住用家屋に関して、被相続人が老人ホーム等の施設に入所した時から相続開始の直前まで、被相続人が一定の使用をしており、事業の用や、貸付けの用、または被相続人以外の者の居住の用に供されていたことがないことも条件です。
また、この「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」の適用は、あくまで家屋が対象ということになります。
そのため、遺産分割を行なった際は注意が必要です。
たとえば、空き家の家屋を長男が相続し、その土地を長男と次男が共有として相続したうえで、そのあとに譲渡をした場合は、空き家の家屋の所有者である長男だけに特例が適用されるということになります。
土地のみを相続した次男には、この特例は適用されません。
空き家売却時に大きな減税が適用される「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」の3,000万円控除ですが、上記で説明したとおり、たくさんの適用要件があり、そのすべてをクリアする必要があります。
この特例を受けるためには、さまざまな書類などの準備も必要となるため、早めに確認しておくと安心ですね。
▼まとめ
誰も住んでいない空き家を放置していると、さまざまな問題が発生するだけでなく、維持管理費もかかってしまい、大きな負担となります。
なるべく早めに空き家の売却を検討し、その際は売却時の減税につながる特例が適用されるかなどもしっかりと確認しておきましょう。
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