放置された空き家は、地域の景観を損ねるだけではなく、倒壊の危険性や防犯面・衛生面において、さまざまな問題を引き起こす原因になります。
とくに日本では、放置された空き家の数が年々増加傾向にあり、深刻な社会問題となっています。
そこで国土交通省は、空き家問題を解消するための対策として「空き家等対策の推進に関する特別措置法」を打ち出しました。
この記事では、国土交通省が制定した「空き家等対策の推進に関する特別措置法」の概要や基本方針、特定空き家に対する措置のガイドラインについて解説いたします。
ぜひ、参考までにご覧ください。
国土交通省の「空き家等対策の推進に関する特別措置法」の概要とは?
平成27年2月26日に、国土交通省は深刻化する空き家問題を解消するために「空き家等対策の推進に関する特別措置法」を施行しました。
上記法律が制定された背景には、管理されていない空き家が防災面、衛生面、景観面において、近隣地域住民の生活に深刻な悪影響を及ぼしているからです。
そこで、地域住民の生命や財産の保護、生活環境を守り、空き家を利活用するための対応策として特別措置法が制定されました。
ちなみに、ここでいう「空き家」とは、居住やそのほかの使用がされていない建物のことを指します。
「空き家等対策の推進に関する特別措置法」の施策の概要は以下のとおりです。
1.国による基本指針の策定・市町村による計画の策定
国土交通大臣、総務大臣は、空き家などに関する施策の基本指針を決めています。
国が定めた基本方針を受けて、それぞれの市町村は空き家等対策計画を定め、協議会を設置しました。
そして各都道府県は市町村に対してアドバイスをおこなったり、市町村相互の連絡の調整をしたりなど、必要な援助をおこないます。
2.空き家についての情報収集
市町村長は法律で定められた範囲内で、空き家の調査をおこなうことができます。
たとえば、空き家の所有者を特定したいときには、固定資産税情報を用いて調査することが可能です。
3. 空き家およびその跡地の活用
市町村は空き家とその跡地についての情報を一般に提供し、活用するための対策を実施します。
4.特定空き家に対する措置
行政は「特定空き家」に指定された空き家の所有者に対して、修繕や植木の伐採などの措置の助言や指導、勧告や命令ができます。
行政が指導しても従わない場合は行政代執行の方法により、解体などの強制執行が可能となります。
特定空き家とは、以下のような空き家のことです。
●倒壊など著しく保安上危険性の高い空き家
●著しく衛生上有害となりうる空き家
●著しく景観を損ねる空き家
●周辺の生活環境を守るために放置することが不適切な空き家
5.財務上の措置および税制上の措置
市町村がよりスムーズに放置された空き家の対策ができるように、国または地方公共団体は、空き家の施策実施にかかる費用を補助する旨が定められています。
国土交通省の「空き家等対策の推進に関する特別措置法」の基本方針
国土交通省は、空き家に関する施策を総合的かつ計画的に実施するために、基本的な指針を定めています。
空き家に関する施策の実施についての基本的な事項
国土交通省は、空き家対策にあたっての基本的な考え方として、空き家の所有者は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、適切な管理に努めるようにと法律で規定しています。
所有者の適切な管理を前提としたうえで、行政の対応としては空き家の適正管理の呼びかけや放置された空き家についての必要な措置の実施が規定されています。
必要な措置とはたとえば、特定空き家に指定された空き家の所有者に対して、行政指導をしたり、強制執行をしたりなどです。
また、不動産会社などの専門家と連携して空き家に関する相談窓口を設けたり、地域住民や市町村の議員を交えた協議会を組織するなどの取り組みについても定めています。
空き家の実態調査については、以下の3点を主に調査します。
●市町村内の空き家の所在の把握
●空き家の所有者の特定および意向の把握
●空き家の所有者についての情報を入手する手段
そのほか、必要に応じて財政上の措置、税制上の措置を講じる旨の定めもあります。
空き家等対策計画に関する事項
市町村が空き家等対策計画を作成する際は、主に以下の内容を定めます。
●対策の対象地区および空き家の種類そのほかの対策についての基本的な指針
●計画期間
●空き家の調査に関する事項
●所有者による空き家の適切な管理促進に関する事項
●空き家および除却した空き家などに係る跡地の活用促進に関する事項
そのほか、住民からの空き家などに関する相談の対応に関する事項や対策の実施体制に関する事項を計画に定めます。
ちなみに、空き家等対策計画は、各市町村の公報やホームページなどで確認できます。
空き家に関する施策を総合的・計画的に実施するために必要な事項
そのほかに定められている空き家対策の必要事項は以下のとおりです。
●空き家所有者への適正管理の啓発と理解の推進
●空き家に対する他法令による諸規制
●空き家の増加抑制策・利活用施策・除却などについての支援施策
このように「空き家等対策の推進に関する特別措置法」では、実施にあたってのさまざまな事項が定められています。
国土交通省の「特定空き家等に対する措置」のガイドライン
「空き家等対策の推進に関する特別措置法」で空き家所有者にもっとも関わる措置は「特定空き家等に対する措置」です。
特定空き家に指定されると、まず始めに所有者は行政から空き家を修繕するよう助言や指導が入ります。
もしそこで、所有者が行政の助言や指導どおりに対応しなかった場合は、勧告が入り、固定資産税などの住宅用特例による軽減措置の適用から除外される措置がとられてしまいます。
それでも対応しない場合は、空き家の所有者へ書面で行政命令が下されます。
命令を受けても所有者が何も対応しなかった場合、次に行政代執行の措置がとられ、強制的に空き家の修繕や解体などの対応がおこなわれることになります。
また、強制執行による空き家の修繕や解体にかかった費用については、後日所有者に請求書が送られます。
このように、特定空き家に指定されるとさまざまなペナルティが発生するため、指定されないように注意しましょう。
「特定空き家」の判断基準については、市町村が参照となるガイドラインを示しています。
たとえば、空き家が著しく傾いていたり、基礎や土台などの主要な部分が損傷していたりする場合は倒壊リスクが高いとして「特定空き家」に指定されます。
また、悪臭が発生していたり、ネズミや害虫によって周辺住民に悪影響を与えている場合も「特定空き家」の指定対象となります。
適切な管理がされずに地域の景観を損ねていたり、立て木の枝などが隣家や道路にはみ出して歩行者などの通行の妨げとなっていたりする場合も該当します。
特定空き家に指定されないためにはしっかりと定期的に管理をし、管理が厳しい場合は処分を検討しましょう。
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まとめ
今回は、国土交通省が制定した「空き家等対策の推進に関する特別措置法」の概要や基本方針、特定空き家に対する措置のガイドラインについて解説いたしました。
特別措置法による「特定空き家」に指定されると、固定資産税の優遇措置が受けられなくなったり、行政代執行されたりと、かなり厳しいペナルティが科せられます。
ぜひ、この記事を参考に「特定空き家」に指定されることのないよう注意しましょう。
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