人口の減少や高齢化により、日本では空き家の数が増え続けています。
空き家にはさまざまな種類がありますが、なかでも問題となっているのが放置された状態の空き家です。
管理されていない空き家は、地域の景観を損ねるだけではなく、安全面、衛生面、治安面からも深刻な問題が多いのが現状です。
このような空き家問題を解消するために、2015年に「空き家対策特別措置法」という法律が施行されました。
この記事では2021年現在の日本の空き家の状況について、さまざまな面からご紹介していきます。
「空き家対策特別措置法」の内容についてもあわせてご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
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012021年現在の空き家の現状は?最新の住宅・土地統計調査の結果をご紹介
総務省統計局では、5年ごとに全国の住宅や土地についての調査・統計をまとめ、「住宅・土地統計調査」として発表しています。こちらの調査では、全国の空き家についての調査・統計結果もまとめていますので、今回はその最新結果である「平成30年住宅・土地統計調査」の結果をご紹介していきましょう。
空き家にはさまざまな種類があり、空き家の現状を知るためには、まずは空き家の種類を把握しておくことが重要なポイントです。
空き家には、賃貸用、売却用、二次的住宅用(別荘など)といった種類に加え、その他の空き家があります。
賃貸用や売却用、二次的住宅用の空き家は不動産市場で流通する必要な住宅となりますが、問題となるのが、その他の空き家です。
その他の空き家とは「管理されていない」、いわゆる放置された空き家のことです。
これらの空き家の種類を踏まえて、2021年現在の空き家の現状を数字でチェックしていきましょう。
空き家率は過去最高に
まず、居住世帯のある住宅(人が住んでいる住宅)は、5366万戸で、総住宅数に占める割合は、86.0%です。次に、空き家や建築中の住宅など、居住世帯のない住宅(世帯主のない住宅)は、876万戸で、総住宅数に占める割合は、14.0%となっています。
居住世帯のない住宅のなかにある空き家の数は、846万戸となっています。
2013年の調査時よりも26万戸空き家の数が増えており、3.2%増加しています。
また、総住宅数に占める空き家の割合である空き家率は、13.6%となっており、これは過去最高の数字となっています。
空き家の種類別の割合
空き家の種類別の割合を見ていきましょう。賃貸用の住宅は、431万戸(総住宅に占める割合 6.9%)
売却用の住宅は、29万戸(総住宅に占める割合 0.5%)
二次的住宅は、38万戸(総住宅に占める割合 0.6%)
その他の住宅は、347万戸(総住宅に占める割合 5.6%)
という数字が発表されています。
また、2013年の調査時と比較してみると、
賃貸用の住宅は、2万戸増加(0.4%増)
売却用の住宅は、1万戸減少(4.5%減)
二次的住宅は、3万戸減少(7.3%減)
その他の住宅は、29万戸増加(9.1%増)
という結果になっています。
これらの調査結果からも、その他の住宅である放置された空き家の数が多く、増加していることがはっきりとわかります。
空き家の種類のなかでも、さまざまなトラブルを引き起こす原因となり得る放置された空き家の数が増加傾向にあることが、大きな問題といえますね。
地域で見る空き家率
2021年の空き家調査の結果から、空き家率は13.6%と過去最高の数字となっており、放置された空き家の割合が増加していることがわかりました。空き家の数や割合は地域によっても、その差が大きく異なり、特徴が見えてきます。
ここでは、都道府県別の空き家率を見ていくことにしましょう。
空き家率の高い都道府県ランキング
1位:山梨県(21.3%)2位:和歌山県(20.3%)
3位:長野県(19.5%)
4位:徳島県(19.4%)
5位:高知県(18.9%)
6位:鹿児島県(18.9%)
7位:愛媛県(18.1%)
8位:香川県(18.0%)
9位:山口県(17.6%)
10位:栃木県(17.4%)
空き家率の高い都道府県ランキングは、山梨県・長野県が上位に入っており、甲信地方の空き家率が高いことが見えてきます。
また、徳島県・高知県・愛媛県・香川県の四国すべてが空き家率の高い都道府県に入っており、四国地方に空き家が多いこともわかります。
やはり、人口が減少しているうえに、高齢化傾向にある地域の空き家が増えているというのが現状のようです。
続いて、空き家率の低い都道府県を見ていきましょう。
空き家率の低い都道府県ランキング
1位:埼玉県(10.2%)2位:沖縄県(10.2%)
3位:東京都(10.6%)
4位:神奈川県(10.7%)
5位:愛知県(11.2%)
6位:宮城県(11.9%)
7位:山形県(12.0%)
8位:千葉県(12.6%)
9位:福岡県(12.7%)
10位:京都府(12.8%)
空き家率の低い都道府県ランキングからは、埼玉県・東京都・神奈川県・千葉県といった、関東都心部の地域が多いことがわかります。
愛知県や宮城県、福岡県など大都市のあるエリアも空き家率が低いようです。
人口が多いエリアは、空き家率も低いという特徴が見えてきます。
空き家の建て方別の割合を見てみると、一戸建てが317万戸(37.5%)、長屋建てが50万戸(5.9%)、共同住宅が475万戸(56.2%)となっています。
2008年までは共同住宅の空き家の数が急増していましたが、2013年以降は、増加幅が縮小しているのも特徴です。
また、住居に占める共同住宅の割合を見てみると、東京都が71.0%、沖縄県が59.0%、神奈川県が55.9%、大阪府が55.2%、福岡県が52.6%となっています。
共同住宅の割合が高い都道府県は、空き家率も低いということがわかります。
022021年現在の空き家の現状は?空き家所有者実態調査の結果をご紹介
次にご紹介するのは、総務省統計局により5年ごとに実施されてきた「空き家実態調査」を引き継いでおこなわれた「空き家所有者実態調査」の最新調査結果です。この調査は「平成30年住宅・土地統計調査」のうち「世帯が所有する空き家」を対象に、令和元年11月から令和2年1月にかけて行われた調査の結果が令和2年12月に公表されたものです。
「空き家所有者実態調査」では、全国の空き家の利用状況や管理実態について明らかにされています。
それでは、調査結果を見ていきましょう。
まず、空き家の腐朽や破損の状態について、回答が得られた総数3912戸のうち55%に腐朽・破損が認められ、特に利用目的の定まらない「その他の空き家」の64%が腐朽・破損していることがわかっています。
また、空き家の管理頻度については、「月に1回から数回」の割合が最も多く、およそ4割程度となりました。
二次的住宅または別荘用の空き家の利用頻度も「月に1回から数回」が最も多く4割程度との結果が出ています。
空き家の取得時の登記や名義変更の有無についての質問では、空き家取得時にこれらの手続きをおこなったとの回答は全体の77%に上りましたが、利用目的の定まらない「その他の空き家」や相続により取得した空き家では、およそ2割程度がいずれもおこなっていないと回答しています。
今後5年間の利用意向については、「空き家にしておく」が28%、「賃貸・売却用」が22.6%、「セカンドハウスなどとして利用」が18.1%となっています。
このうち今後の利用意向が「賃貸・売却用」と回答された空き家では、利用にあたっての課題は「買い手・借り手の少なさ」42.3%、「住宅の傷み」30.5%、「設備や建具の古さ」26.9%などでした。
また、今後の利用意向が「空き家にしておく」であった空き家について、空き家にしておく理由は、「物置として必要」が最も多く60.3%、次いで「解体費用をかけたくない」46.9%、「更地にしても使い道がない」36.7%となっています。
03空き家対策特別措置法とは?
放置された空き家は、さまざまなトラブルを引き起こしてしまう可能性もあります。社会問題となっている空き家による問題を解消し、空き家の活用や処分・解体をサポートするために作られた法律が、「空き家対策特別措置法」です。
「空き家対策特別措置法」では、「特定空き家等」と認定された空き家の所有者に対して、行政が修繕・撤去の指導、勧告や命令を指示することができ、行政から勧告を受けた場合は、固定資産税の特例も解除されてしまいます。
特定空き家等とは?
まずは、「特定空き家等」とは、どのような空き家のことをいうのか、説明しておきましょう。安全上問題のある空き家
倒壊の可能性が高い空き家は、安全上の問題から、放置されたままだと、大事故につながりやすくなってしまいます。周辺住民にも危険が及ぶため、一刻も早い対応が必要です。
衛生面で問題がある空き家
放置された空き家は、排水溝が詰まったり不法投棄されたりといった可能性が高く、臭いを含め衛生面で有害なものになってしまいます。景観面を損ねる空き家
誰も手入れを行わない空き家は、雑草が生い茂り地域の景観を損ねてしまいます。治安面で不安のある空き家
誰も住んでおらず、放置されたままの空き家は空き巣や放火のターゲットになりやすく、地域に犯罪を招いてしまう可能性が高くなります。固定資産税が6倍になることも!
空き家が増加した原因のひとつに、「固定資産税の住宅用地特例措置」制度があります。「固定資産税の住宅用地特例措置」とは、住宅がある、住宅用の土地に対して、200平方メートルまでの土地には6分の1、200平方メートルを超える土地には3分の1まで、固定資産税を減額するという特例です。
空き家を解体してしまうと、住宅がなくなってしまい、この特例措置の対象外になってしまうため、節税のために放置されたままの空き地が増えたと考えられています。
「空き家対策特別措置法」が2015年に施行されたことにより、行政から空き家の修繕や撤去などの指導を受けたにも関わらず、改善されない場合は、勧告が出され、勧告が出されると上記で説明した「固定資産税の住宅用地特例措置」が除外され、固定資産税が最大でこれまでの6倍にまで上がってしまうのです。
「空き家対策特別措置法」により、空き家を放置したままにすることは許されなくなりました。
空き家の所有者は修繕や解体、売却など活用方法を検討しなければならないため、放置空き家は減少していくと考えられるでしょう。
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04まとめ
2021年の空き家現状調査から、空き家の数は増加していることがわかりました。各自治体は、「空き家対策特別措置法」に従い、空き家を減らすためにさまざまな取り組みをおこなっています。
今後は行政・民間双方の努力により、空き家を有効活用する仕組みがさらに整っていくのではないでしょうか。
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