近年、空き家から発生する火災が全国で問題となっています。
冬になると空気が乾燥するので、火の取り扱いにはいつも以上に注意しなくてはいけませんが、空き家の場合は放置したまま何も対策をしていない所有者が少なくありません。
今回は、大切な資産や命を守るために、空き家の火災についてご紹介します。
空き家火災の出火原因で多いもの
空き家火災の出火原因で多く見られるのが放火です。
誰も住んでいない住宅は人目につきにくいため、犯人から格好の餌食となるのでしょう。
実際、放火が出火原因の火災は19年連続で1位となっております。
消防庁による近年の放火件数の詳細は以下の通りです。
放火件数
平成29年:放火…1,050件、放火の疑い…718件、合計…1,768件
平成30年:放火…776件、放火の疑い…607件、合計…1,383件
参照元:平成30年(1~3月)における火災の概要
平成30年は、1月~3月の3ヶ月間だけで既に放火件数が1,000件を超えていて、その前年の平成29年に発生した件数に迫っています。
単純計算すると、毎月約470件の火災が犯罪によって全国で起きているのです。
さらにその3年前の平成27年では、放火の件数は4,000件を超え、全火災件数の10%を超える被害が出ていました。
放火がいかに多く、また、注意を必要とするのかがこのデータからもわかりますね。
誰もいないはずの空き家も、火災の可能性は十分あるのだと心得ておきましょう。
火災が起きやすい空き家の特徴
火災が起きやすい空き家の特徴は、ずばり「管理不足」です。
下記のような空き家は、誰でも侵入しやすく出火元として犯人に狙われてしまいます。
●明かりが灯らず住人の気配がない
●周囲から家のようすを容易に伺える
●近隣に家がなく、人の気配があまりない
●門扉がなかったり常に開いていたりする
●ドアや窓の施錠がされていない
また、新聞紙や雑誌、灯油容器などの燃えやすいものを置いている空き家も狙われやすくなります。
なお消防統計によると、放火は午前中よりも夕方から夜中にかけて発生することが多く、場所は建物の周りよりも室内の方が多いそうです。
※参照元:消防統計
また、放火以外の空き家の火災の原因には、次のようなものが見受けられます。
●タバコのポイ捨て
●ガス漏れなどによる爆発
●配線機器のトラブル
放火による火災の場合と同様、これらを原因とした火災を防いでいくためには、空き家を定期的に管理していくことが重要となります。
タバコのポイ捨てによる火災では、敷地内で手入れされずに伸び放題となった雑草や、不法投棄されたごみなどにタバコの火が燃え移り延焼するケースがあります。
また、ガス漏れや配線機器のトラブルを原因とした火災では、設備の確認を怠って老朽化したり、異常が発生したりした状態で放置した結果、火災を引き起こしてしまうことがあります。
そして意外な原因としては、ネズミが配線をかじって火災が起こるケースもあるんですよ!
もし室内に動物のフンなどがあったら、どこかに動物が潜んでいないか、かじられている配線がないかよく確認しましょう。
これらの原因による火災を防ぐためには、定期的に空き家を訪れて、敷地内の草木を手入れし、ごみが不法投棄されている場合は清掃する、また、設備の老朽化や異常がないかを確認することが大切となります。
誰も住んでいない家は、メンテナンス不足になりやすい部分がありますので、出火原因の特徴を押さえて火災防止対策に役立てるようにしましょう。
空き家を火災から守る管理方法
空き家を火災から守るには、出火傾向を踏まえた対応策が有効的です。
もう住むことがない空き家は、賃貸に出す・売却する・解体することのいずれかが望ましいですが、迅速に実現できないのであれば、下記の方法を試してみましょう。
●人の気配を感じて点灯する照明を取り付けるなどし、家の周辺を明るくする
●きちんと戸締りをして門扉も閉じ、人の侵入を防ぐ
●目のつく場所に管理業者の社名と連絡先を明記し、管理人の存在を示す
●ご近所さんに何か問題があれば連絡してもらえるようお願いしておく
●新聞紙や雑誌、灯油タンクなど、燃えやすいものを片付ける
庭の手入れや郵便受けのチラシなどにも気を配り、家に人の出入りがあるような雰囲気を出しておくのが大切です。
また新聞紙や雑誌に限らず、外にごみを出しっぱなしにするのもやめておきましょう。
効果的な見回りは、定期的ではなく不定期にした方が犯人にとっては都合が悪く、侵入されにくいといえます。
家がきちんとケアされていることをアピールしておけば、犯罪の温床になりにくくなるでしょう。
空き家の火災で責任はどうなる?保険は?
出火元が空き家として火災が発生し、万が一近隣の住宅に延焼した場合は、責任を問われるケースがあります。
状況にもよりますが、その火災が「重過失」によるものと判断されてしまうと、賠償責任を負わなくてはなりません。
そして、こんな万が一の際に備えるのが「火災保険」です。
誰も住んでいない家は「住宅」とみなされず、保険料が割高になる場合が多く加入条件も厳しいですが、空き家も火災保険に加入できます。
火災保険の特約にある賠償責任においては、「個人賠償責任保険」には加入できず、「施設賠償責任保険」という、人ではなく空き家が何かに被害を与えた際の責任で補償を受けます。
空き家には人が住んでいない=人が何かに被害を及ぼすことはないので、「個人」ではなく「施設」の賠償責任保険になるわけです。
ただし、契約には家の管理状況が重要なので、廃屋のような空き家に火災保険を付けることは難しいと肝に銘じておきましょう。
重大な過失とされて保険金を受け取ることができなかったケース
●3か月間管理者が建物をずっと放置していた。
さらに裏口を施錠しておらず、放火犯はその場所から侵入し、西側の石油タンク付近にて放火したとみられる。
●親族がきちんと管理していた空き家であり、犯人が侵入し放火の準備らしき行動をしたことを目撃するも、警察に連絡などをすることもなく、その日の晩火災が発生してしまった。
このようなケースは第三者が行った犯行による火災ではありますが、所有者が管理者の重大な過失とみなされ、保険金を受け取るどころか損害賠償を請求されることになってしまう恐れがあるので火災保険に入っても定期的に空き家の管理を行う必要があります。
明らかに管理不足と思われる空き家の火災は、重過失に問われやすくなりますので、根本的な問題として家のメンテナンスやケアをしっかり行いましょう。
また、周囲に被害を及ぼさなかったとしても、空き家が燃えてなくなれば、残存物の後片付けや廃棄をしなくてはなりません。
その費用も決して安くありませんので、やはり何らかの保険に加入しておく方が安心でしょう。
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