近年は、空き家の活用方法として、移住者向けに家を売ったり貸したりするケースがあります。
空き家所有者と移住者をマッチングさせることで、空き家の増加を抑えようという試みです。
また、移住希望者は、築年数が古い空き家を低価格で購入したり借りたりできるメリットがあり、売る側・貸す側は空き家管理の手間が省けるメリットがあります。
しかし、いくらお得な物件とはいえ、思った以上に劣化が進んでいて住むのに問題があるようでは、安心して取引ができないですよね。
そこでおすすめしたいのが、インスペクションです。
インスペクションとは?空き家の取引に役立つ?
インスペクション(またはホームインスペクション)とは、住宅のプロである建築士などの専門家が、住宅の劣化具合や補修が必要な箇所を調査する住宅診断のことです。
昔から中古住宅の流通が多い欧米では一般的におこなわれているインスペクションですが、新築住宅を好む日本ではあまり馴染みがありませんでした。
しかし、2018年4月に中古住宅の流通とインスペクションの活用を促進するために宅地建物取引業法が改正。
宅建業者は中古住宅の仲介をする際に、インスペクションの説明が義務化されました。
この改正によって、中古住宅の取引をする際に住宅診断をおこなうケースが増えました。
空き家の取引において重要なインスペクションをおこなう際は、以下のポイントをチェックされます。
●①構造耐力上、安全性に支障をきたす可能性がある箇所
●②雨漏り・水漏れの可能性がある箇所
●③設備配管等、日常生活に支障をきたす可能性がある箇所
①の構造耐力は、柱・梁・床・壁・基礎などをチェックします。
たとえば、シロアリ被害がないか、床が斜めになっていないか、鉄筋が錆びていないかを調べます。
②の雨漏り・水漏れは、屋根・外壁・天井・内壁などのことです。
たとえば、屋根の防水材が破断していないか、屋外サッシの建具が破損していないか、天井から雨漏りしていないかを確認します。
③の設備配管等は、給排水管、給湯管、換気ダクトなどのことです。
たとえば、給水管内部が錆びて水が赤くなっていないか、排水管が詰まっていないか、換気ダクトの調子が悪く換気不良を起こしていないかをチェックします。
いずれの箇所も、劣化が進むとそのまま住み続けることができなくなる可能性があるところばかりです。
とくに空き家は日常的に換気や通水がおこなわれない分、劣化が進みやすく目に見えないところが思った以上に傷んでいたというケースも少なくありません。
空き家をインスペクションする際のメリット・デメリットとは?
では、空き家を活用する際に、インスペクションをおこなうとどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
空き家をインスペクションするメリット
最大のメリットは、インスペクションをおこなうことで契約当事者の双方が安心して取引ができる点です。
たとえば、あなたがある空き家を購入しようと考えたときに「シロアリはいないか」「雨漏りはしないか」など、気になる点が出てくるでしょう。
もしも空き家の購入後に雨漏りやシロアリが発覚した場合は、大がかりな修繕工事が必要となり、思わぬ出費が発生するかもしれません。
そんな不安が残る住宅だと、購入したいと思う方は少ないでしょう。
その点、インスペクションをおこなうと、プロの調査によって空き家の劣化状況を詳細に把握することができます。
「どこが劣化しているのか」「将来的に修繕が必要になりそうな箇所はどこか」などを事前に把握できると、買いたい側・借りたい側も安心して取引ができますよね。
また売る側・貸す側としても、家屋の劣化状況を把握することで修繕が必要かどうかの判断がしやすくなります。
もし空き家の劣化状況を把握せずに物件を引き渡してしまうと「こんな劣化があるなんて聞いていない」と、トラブルが起きる可能性があるかもしれません。
つまり、空き家のインスペクションをおこなうことは、売る側と貸す側、買う側と借りる側のどちらにとっても大切なことなのです。
空き家をインスペクションするデメリット
空き家をインスペクションするデメリットは、料金がかかる点と言えます。
住んでいる地域や依頼する業者によっても異なりますが、相場は5万円~15万円ほどです。
インスペクションをおこなうことで、修繕箇所が多いことがわかり、かえって売却価格が下がる可能性もあります。
修繕後に売却するにしても、修繕に多額の費用がかかる場合は、結局は解体して更地で売ったほうが良いということもありえます。
しかし、売却後や賃貸借契約後に不具合が発覚し契約トラブルに発展するよりも、インスペクションをおこなって事前にリスクを回避したほうが長期的にみて良いといえるでしょう。
空き家のインスペクションをおこなうときの検査方法とは?
では実際にインスペクションをおこなう際は、どのような検査方法でどのくらい時間がかかるのかも気になるところでしょう。
インスペクションの検査方法
インスペクションの検査方法は、主に目視・触診・打診・計測があります。
目視は、検査対象の箇所を目で見て、劣化状況をチェックする方法です。
目視だけで判断することがむずかしい箇所は、直接触ったり、道具を使って叩いたり、機器を使って計ったりなどの方法を用いてチェックします。
チェックをおこなうのは住宅診断士と呼ばれる資格を持つ方々です。
住宅診断のプロならではの目線で家屋の状態を確認するため、素人の目には一見問題がなさそうに見える住宅でも、隠れた欠陥を発見してくれます。
インスペクションが完了すると、家屋の現在の状況をまとめた住宅診断報告書が作成されます。
中古住宅の取引の際は、この住宅診断報告書を見ることで空き家の劣化状況が把握できますよ。
なお、インスペクションは一次診断と二次診断があり、現状を把握するための基礎検査は一次診断となります。
一方で、耐震性のチェックはより詳しい現状把握をするための二次診断に分類されるため、インスペクションを依頼しても必ずおこなわれるわけではありません。
古い空き家で耐震性が心配という方は、二次診断まで依頼すると良いでしょう。
インスペクションの流れとかかる時間
インスペクションを業者に依頼して、完了するまでの主な流れは以下のとおりです。
●インスペクションの業者を探し、日時を決めて依頼
●住宅の図面など、必要書類を準備して事前に業者に送付
●依頼主も立ち会いのもと、住宅検査を実施
●報告書を受け取った後の確認
●報告書に問題がなければ料金を支払い、手続き完了
インスペクションにかかる時間は、検査方法や住宅の面積によって変わります。
目安としては、100㎡の2階建て住宅で基本の検査は約2時間~3時間、床下や屋根裏などの検査も依頼する場合は約3時間~4時間です。
事前説明や検査後の報告時間も含めると、トータルで半日ほどかかるとみておいたほうが良いでしょう。
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まとめ
空き家は思った以上に傷みがひどくなっている部分もあり、それに気付かずに取引をおこなうと後々に大きなトラブルになりかねません。
そこで取引前にインスペクションをおこなうと、住宅の劣化状況を事前に把握できるため、契約当事者の双方にとって安心です。
空き家を売る側と買う側のどちらも安心して取引がおこなえるように、インスペクションをぜひご活用ください。
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